まず、自転車屋に行きいつの間にかとれていたキャリアー(荷台)のネジを付け直した。 Bike Market という二階建ての建物が丸々自転車ショップで見ているだけで楽しいところだった。スポーツバイクで旅をしていると純粋に自転車に乗るという楽しみもできる。自分のとは全く違う自転車に思いを馳せたり、細かいパーツを眺めているだけで飽きない。
次にアイマスクを探した。ローマに来るときに利用したエミレーツ航空でもらったアイマスクを愛用していたのだがプラハに置いてきてしまった。公園で昼寝したり、寝る時間がバラバラな人と部屋を共有するユースホステルに泊まる時など意外と役立つのだ。しかし、観光センターの人に勧められた大型ドラッグストアにも無く購入を断念。
バーガーキングで昼食をとりながら、久々に大学の友人と電話した。彼は一緒に合気道をやって来た仲間で、一ヶ月会わなかっただけで話すことがたくさんあった。技術というものは素晴らしい。
時間が来るまで市街地側のヨットハーバーを散策したり、ホットドッグを食べたりして過ごす。
最後にスーパーによって食材を買った。船旅の前ということでいつにも増して買ってしまう。たまたま250mlのワインの小瓶を見つけ思わず手にとる。1ユーロ程度の安酒だが旅とぶどう酒という組み合わせはなんともそそるので思わず買ってしまった。他にも袋のインスタントラーメンも見つけ楽しく買い物が出来た。
水も3L買い、過去最大級の重量を携えフェリーポートへ。
ここまでは若干暇を弄びながらドイツ最終日を満喫していた。
だがここからが険しかった。 結論から言うとチケットを手にし僕は今予定通りヘルシンキに向かうフェリーの中でこれを書いている。だが、そこまでの過程が中々ヘビーだった。
チケットカウンターが開くのが19時。18時にはカウンターのあるビルの前に到着した。そこには自転車のそばに立つ先客がいて「日本人ですか」と声をかけられた。これまでの道中で日本人の自転車乗りにあったのは初めてだ。彼は広島から来たらしく還暦を超えていると言っていたからかなりのお歳だろう。何回かに分けてヨーロッパ一周をしようとしているらしい。この歳で自転車旅をするバイタリティには素直に尊敬した。
問題は19時にカウンターが開いて始まった。いつものように時系列や会話に沿ってここに記すことは難しいので何が起こったか状況を箇条書きにしてみる。
・チケットは残り一つ。彼も僕も予約はしていなかった。
・その日の深夜3p.mに140km離れた港からヘルシンキ行きのフェリーが出る。
・フェリー会社のスタッフさんは自転車が車に乗ればそこまでの連れて行ってくれる。
・僕の自転車はタイヤを外すことは出来るがフレームの分解までは出来ない。
・彼の自転車は輪行にも対応しておりフレームの分解も可。
・次のフェリーは一週間後。
皆さんはこのような状況に直面したときどのように行動するだろうか。
僕は次のように考えた。
1 この場合の最適解は旅人二人が当初の目的地ヘルシンキに到達すること。
2 最初に来ていた彼にチケットをとる優先権がある。
3 1、2よりベストな答えは僕が車に乗って深夜の便でヘルシンキに向かうこと。
4 しかし所持する自転車は彼の方が車に載せるのに適しており、スタッフさんも「That bike is better」と言っている。
5 自転車を運ぶ手間を考えても彼が納得出来るなら僕がこのフェリーに乗り、彼が深夜の便で行くことがフェリー会社のスタッフを含めてもみんなが納得出来るのではないか。
と、考え「以上のような状況ですので彼さんさえよろしければチケットを譲っていただけませんか」と丁寧にお願いした。正直に言うとここで変わってもらえると予想していた。立場が逆だったら少なくとも自分は喜んで若い旅人に道を譲ると思ったからだ。 しかし、彼の返答は…
「いや、無理、無理、無理。だって朝の3時でしょー 眠いもん!」
だった。もちろん上の2番で書いたように彼には断る権利がある。だがまさかそれを 「眠い」 という理由で還暦を超えた人間が断るなんて予想外すぎた。
スタッフさんもてっきり彼が車に乗るものだと思っていたようなので"Yeah, actually he can do that. (車に乗る事) But he do not wanna do that. So he takes the seat and I try to put my bike into the car. Bye."と言ってカウンターを後にし、お姉さんも若干引きながら彼の手続きを始めた。
気持ちを入れ替え、こうなったらなんとしても自転車を載せるしかない。後輪に載っている荷物を振りほどきフロントバックも外して持ち上げてみる。
が、入らない。
タイヤまでは外れるのだが手持ちの道具ではハンドルや泥除けまでは外せない。スタッフさんもすごい嫌そうな顔だ。 僕の自転車を小型トラックの狭い荷台に入れることは無理だった。
この時点で起こりうる未来は二つ。
1 彼がフェリーに乗りヘンルシンキへ行き。僕はヘルシンキ行きを諦め、旅の予定を変える。
2 彼を再度説得してチケットを譲ってもらい彼が睡眠時間を失うことになるが二人ともヘルシンキには行ける。
もちろんどちらか一方しかヘルシンキへ行けないのであれば諦めるが、二人ともヘルシンキに行けるならそれに越したことはないと思ったのでここからは全身全霊で彼を説得することにした。
多少強引だったがもう一度話した結果。
譲ってもらえた。
ちょうど財布からお金を出すところだったのでギリギリセーフ。このままでは僕がヘルシンキに行けなくなることを理解し、納得した上で変わってくれたものだと思い、「後で連絡先でも聞いて日本に帰ったら菓子折りでも持って広島にお礼に行こう。」とか考えていた。
しかし、それは僕の思い込みだった。
5分後、彼はカウンターに再び入って来て大声で何かまくし立ててきた。めちゃくちゃ怒っていることはわかったのだが何を怒っているのか聞き取れなかったので「待ってください。もう一度お願いします。聞きます。」と言って出ていこうとする彼を引き止めた。まとめると「3時のフェリーまで7時間もあれば自転車で間に合うじゃないか。この嘘つきが‼︎」みないなことだった。そして最後にここでは書けないような暴言を吐いて彼は出て行ってしまった。 だが、それは間違っている。彼なら行けるかもしれないが、僕には無理だ。以前調子がいい時でさえ朝から走って丸一日かけてやっとベルリンまで150km走ったことからも地図で確認もしていない土地へ暗くなった後も走りながら140km走り切り到達することは実際問題僕には不可能だ。その上今は最大級に荷物を積んでいる。おそらく彼もそんな事が大事なのではなく、つまりは納得してチケットを譲ってくれた訳ではないということなのだろう。チケットを受け取った後、英語が得意ではなさそうな彼にせめてもの事をしたいと彼が何時にここにまた来るべきかをメモしてそれを彼に渡してからカウンターを後にした。
なんとかヘルシンキへの道が開けたものの心は重い。
フェリーに乗り込み、ローマから走ってきたヨーロッパの大地から一旦離れる瞬間を見ておきたかったので11時から甲板の一番高い所に腰掛け船出を待つ。予定では1時に出航だったが結局3時に出航。それまでの4時間ずっと頭にあったのは彼との事。 ここから3日間は海の上。思案を巡らす時間だけはたっぷりと用意されていた。自分の行動に後悔はしていない。また同じ状況に陥ったら同じように行動するだろう。
では、



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